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  • CHAPTER 01
  • CHAPTER 02
  • CHAPTER 03
  • CHAPTER 04

STORY 01

  
イベントコーディネーター
2020年新卒入社

タイトル

タイトル

  1. CHAPTER 01
  2. CHAPTER 02
  3. CHAPTER 03
  4. CHAPTER 04

CHAPTER 01

はじめての見学会。
不安と焦り。

“きっと答えは一つじゃない”
イヤホンから流れるお気に入りのフレーズ。
でもいまの私には響かない。散歩をしていても景色に目がいかない。
遊び盛りの愛猫のチャーちゃんと遊んでいても、
イベント出席の保留を告げる緑色のランプが頭の中のパソコンに並んでいる。
そうだ。私は今焦っている。

高校1年生に向けた見学会の企画を任せてもらった。
文系・理系大学、スポーツ、調理・栄養、情報処理・マルチメディアなどの
希望進路別に10コースに分かれ、
同じ日に別々の学校を見学して周るという内容だ。
私は就職コースを担当しながら、運営本部の責任者も務めることになった。
先輩たちがスタッフとして協力してくれたり、
先生も引率してくれたりするのは心強いが、
見学会の運営経験がない私が管理しきれるのか不安でいっぱいだ。
ただでさえ心配の種が尽きないのに、
疫病の影響で受け入れ先の学校がなかなか決まらない。

刻一刻と当日が迫る中、今もタッグを組んでいる荒原さんが
受け入れ先の候補を探し続けてくれている。
私も頑張らなきゃ。
昼食のパスタをガムシロップ多めのコーヒーで流し込み、次の学校へ急ぐ。

CHAPTER 02

生徒の
未来のために。

国道4号線から見えるひらけた埼玉の空は辺り一面が雲に覆われている。
いつもなら季節の移ろいを景色から感じたり、
前を走る車のナンバープレートを数えたり、
頭を空っぽにしてリラックスできるお気に入りの時間だけれど、
憂鬱な天気が世界をモノクロに写す。
私にはまだ早かったのかな。
後ろ向きの気持ちに抗うように入社当時を思い返していた。

私は生来、身の回りの機微に心が惹かれる性分のようだ。
綺麗に咲いている花を手入れしているであろう人に思いを巡らせてみたり、
散歩している犬と飼い主の顔を覚えていたり。
そんな性格だからか、就職活動も自分の身近に感じられることや
誰かに寄り添えることを軸に探した。
旅行が好きだったので旅行業界もみたし、人の役にたてる医療業界もみた。
なかでも取り分け私の興味を引いたのは、教育という人の核をつくる仕事だった。
教育課程をとっていない私。
大学職員や塾の運営会社などの選択肢もあったが、
生徒の進路決定を後押しする機会を提供しているライセンスアカデミーと出会い、
仕事と会社の雰囲気に惹かれて入社を決めた。

そうだ。私は生徒の未来のために頑張っているんだ。
たくさんの進路があることを伝え、
生徒一人ひとりが希望を見つけられるイベントにしたくて
10コースの見学会を企画したのだ。
負けるもんか。
ほんの少し顔を上げると遠くにみえる川面がきらりと光る。
秋の空は変わりやすいのだ。

CHAPTER 03

目まぐるしさの中に
見つけた喜び。

本格的な寒さが肌をさす12月半ばの朝、私は当日を迎えた。
すばらしい学校や企業が見学会を受け入れてくれた。
何度も行程を見直して準備をしてきた。出来ることは全部やってきた。
大丈夫、大丈夫。
私にしては珍しい強がりまじりの自信を胸に担当コースの説明会場に入る。
講師の消防士の方に挨拶を済ませ、プロジェクターを組み立て、
レジュメを席に配ってまわる。
生徒もチラホラと集まり出した。順調だ。

プルル、プルル。
「予定より早く到着しそう。どこで待っていればいいか」
プルル、プルル。
「集合時間に間に合わなかった子がいる。2班に分かれて行動していいか」
プルル、プルル。
「専門学校の食堂が使えないらしい。昼食はどうしよう」

隙をつくように鳴り止まない着信音が、
丁寧に育ててきた私の虚勢を一瞬で吹き飛ばす。
大丈夫、大丈夫。
心の中で繰り返し唱えながら1つずつ応対していく。
講師が控え室から出てきたのを見てあわてて時計に目を向ける。
もうこんな時間か。呼吸を整える余裕もないまま講義がはじまった。

教室はスクリーン投影の為にすこし暗くなり、生徒も講師の話に耳を傾けている。数分前の慌ただしさが嘘のようだ。
ポケットの携帯電話に意識を向けながら一呼吸おき、生徒の様子に目をむける。
知っているようで知らなかった消防士の仕事に大げさに頷く後ろ姿がみえる。
話を聞き逃すまいと夢中でメモをとる音が聞こえる。
講師のジェスチャーに釣られてつい真似をしている子がいる。
教室を見渡しながら、強烈な嬉しさが胸にこみ上げるのを感じる。
油断するのはまだ早い。
でも、言わせてほしい。私はきっとこの光景を見たかったのだ。

CHAPTER 04

選択肢を
届けつづける。

「おれ、消防士になる」
講義の内容に花を咲かせる生徒の会話が聞こえてくる。
本気か冗談かわからないけど、きっかけになってくれたなら私は嬉しい。
続々と他のコースの終了報告が届く。
最後のメールを確認した瞬間、肩の力が抜けるのを感じた。
無事に見学会をやり切ることができた。
身体は疲れているが不思議と片づけに身がはいる。

帰りぎわに先生が労いの言葉をくれた。
万全な感染対策をしたこと、全コースをスタッフが引率したこと、
電車の乗りかえ時間まで調べておいたこと。
どれも私なりにこだわったことだから見てくれていて嬉しかった。
仰ぎみた八潮の夕空にはオリオン座が浮かぶ。
そうだ。今日は散歩をして帰ろう。

いつか先輩が言っていた。
「1年生だった生徒が3年生になって自分の進路を決めていく姿を見守れることが、
この仕事の醍醐味だよ」

営業車をレンタカー店に返し、
家までの道のりを少し遠回りしながらこの言葉を思い出していた。
私はまだ経験したことがない感覚だけど
来年も再来年も彼らの力になりたいと心から思う。
見学会の経験をいかして、もっといいイベントを作れるように頑張ろう。
無数にある進路から、
彼ら一人ひとりが思い描く将来に向けて決断をしていけるように。
イヤホンから流れるお気に入りのフレーズが私の決意を後押しする。
そう、きっと答えは一つじゃない。

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